アイルランド、犬のマイクロチップ違反に反則金を導入へ|日本はマイクロチップを登録しなくても罰則なし、鑑札の代わりになる特例も
アイルランド政府は2026年11月3日、2030年までの動物福祉戦略を発表し、犬のマイクロチップ規則を改正して反則金を導入する方針を示しました。日本では、飼い主がマイクロチップを登録しなくても罰則はありません。
犬と暮らしていて、マイクロチップの登録や鑑札の決まりが気になっている人へ。アイルランドで何が決まり、何がこれからの予定なのか、日本の決まりとどこが違うのかを、両国の法令と政府の資料をもとに説明します。
本記事の情報源
アイルランド農業・食料・海洋省の発表と「動物福祉戦略2026–2030」の本文、アイルランドの犬のマイクロチップ規則・犬管理法・犬繁殖施設法、日本の狂犬病予防法・動物愛護法と環境省・厚生労働省の資料をもとに、日本の読者向けにまとめた記事です。
原文:Minister Heydon launches Animal Welfare Strategy 2026–2030(アイルランド農業・食料・海洋省、2026年11月3日)
執筆:ペトログ編集部
目次
アイルランドが動物福祉戦略2026–2030を発表——犬の取り締まりを強化へ
アイルランドの農業・食料・海洋大臣マーティン・ヘイドン氏は11月3日、2026年から2030年までの動物福祉戦略を発表しました。2021〜2025年に続く2回目の戦略です。発表は、取り締まりの強化、責任ある犬の繁殖と飼い方、犬の追跡(トレーサビリティ)の向上などに重点を置くとしています。
戦略をまとめる原則は、高い福祉水準の推進、取り締まりと統治の強化、教育、研究、関係者との連携の5つです。犬の管理と繁殖施設について大臣に助言する作業部会を設けることも、主な約束に挙げました。動物福祉の慈善団体への資金は、2020年予算の240万ユーロから、2025年には約650万ユーロ(全国94団体)に増えています。
戦略の序文で、大臣は「動物福祉は法律だけでは守れない。全員の責任だ」と書いています。ただ、戦略に並ぶ項目の多くは「改正する」「見直す」「検討する」といった、これからの予定です。個別の項目に期限は書かれていません。
出典:アイルランド農業・食料・海洋省(2026年11月3日発表)、「Animal Welfare Strategy for Ireland 2026 - 2030」
アイルランドの犬のマイクロチップ——すべての犬に義務、違反に反則金を導入へ
アイルランドでは、2015年のマイクロチップ規則で、すべての犬にマイクロチップの装着と登録が義務づけられています。2015年6月1日より後に生まれた犬は生後12週までに、それより前から飼われている犬も2016年3月31日までに、装着と登録が必要になりました。登録先は、国のウェブサイトに一覧が載っているデータベースです。
違反は裁判で裁かれ、略式の手続きでは5,000ユーロ以下の罰金か6か月以下の拘禁、またはその両方になります。今回の戦略は、この規則を改正し、反則金(fixed payment notice)で済ませられるようにするとしました。反則金の額や導入の時期は書かれていません。
あわせて、飼い主がマイクロチップを入れるよう後押しし、犬の追跡に使う一元的なオンラインのポータルの開発を目指すとしています。
出典:Microchipping of Dogs Regulations 2015(S.I. No. 63/2015)、Animal Health and Welfare Act 2013 第36条、動物福祉戦略2026–2030
犬のライセンスとマイクロチップの連動は「検討」の段階
アイルランドでは、犬を飼うにはマイクロチップとは別に、犬のライセンスが要ります(犬管理法)。料金は1年20ユーロ、その犬が生きている間有効な生涯ライセンスが140ユーロで、郵便局やオンラインで取れます。ライセンスなしで飼うと、150ユーロの反則金の対象です。
戦略は、犬管理法を見直すとし、その中でライセンスの見直しや、マイクロチップとライセンスの連動を挙げています。連動は見直しの中で検討する事項で、具体的に何をするかはまだ書かれていません。
出典:Control of Dogs Act 1986 第2条、同 第27条、S.I. No. 540/2023、An Post「Dog Licence」、ダブリン市「Dog Control」
アイルランドは犬の繁殖業者(ブリーダー)の罰則も引き上げへ
アイルランドの犬繁殖施設法(2010年)は、繁殖に使える生後6か月を超えた雌犬を6頭以上飼う施設に、自治体への登録を求めています。登録せずに運営すると罪になり、略式の手続きで5,000ユーロ以下の罰金か6か月以下の拘禁、またはその両方です。
戦略は、この法律を改正して、取り締まりを強め、制裁と罰金を引き上げるとしました。新しい罰金の額は示されていません。なお、生後8週未満の犬や猫を売ったり譲ったりすることは、2020年2月から規則で禁じられています。
出典:Dog Breeding Establishments Act 2010、Animal Health and Welfare (Sale or Supply of Pet Animals) Regulations 2019、動物福祉戦略2026–2030
日本の犬のマイクロチップと鑑札——マイクロチップは登録しなくても罰則なし、鑑札は罰則あり
日本では2022年6月1日から、ブリーダーやペットショップなどの販売業者に、犬や猫へのマイクロチップの装着と登録が義務づけられました。一般の飼い主は、装着が努力義務です。自分で装着したら30日以内に登録し、登録済みの犬や猫を迎えたら30日以内に変更登録をすることになっています。
ただし動物愛護法には、飼い主が登録や変更登録をしなかったときの罰則の規定がありません。罰則があるのは、狂犬病予防法の犬の登録のほうです。犬を迎えたら30日以内(生後90日以内の子犬は、生後90日を過ぎてから30日以内)に市区町村で登録して鑑札を着けることになっていて、これをしないと20万円以下の罰金を科されることがあります。
2つの登録をつなぐのが、狂犬病予防法の特例(いわゆるワンストップサービス)です。特例に参加している市区町村では、マイクロチップの登録が犬の登録とみなされ、マイクロチップが鑑札の代わりになります。参加していない市区町村では、これまでどおり市区町村での犬の登録が必要です。どちらの場合も、狂犬病予防注射の注射済票は別に受け取ります。参加している市区町村の一覧が載っているのは、環境省の登録サイトです。
出典:e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(第39条の2〜第39条の7、第44条〜第50条)、「狂犬病予防法」(第4条・第27条)、環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録について」、厚生労働省「狂犬病について」、環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録」ダウンロード
マイクロチップと犬の登録、日本とアイルランドの違い
| 項目 | アイルランド(今の法律) | アイルランド(戦略の予定) | 日本(今の法律) |
|---|---|---|---|
| 犬のマイクロチップ | すべての犬に装着・登録の義務 | 装着を後押し。一元的な追跡ポータルを目指す | 販売業者は義務、一般の飼い主は努力義務。装着したら30日以内に登録、登録済みの犬を迎えたら30日以内に変更登録 |
| マイクロチップの違反 | 裁判で5,000ユーロ以下の罰金など | 反則金を導入(額は未定) | 飼い主が登録しなくても罰則の規定はない |
| 犬の登録 | 犬のライセンス(1年20ユーロ、生涯140ユーロ)。無許可は反則金150ユーロ | ライセンスを見直し、マイクロチップとの連動を検討 | 市区町村に登録して鑑札を着ける。違反は20万円以下の罰金。特例の参加市区町村ではマイクロチップが鑑札の代わり |
| 繁殖業者 | 繁殖に使える雌犬6頭以上の施設は自治体に登録 | 法改正で制裁・罰金を引き上げ | 第一種動物取扱業の登録と数値規制。基準を守らず命令にも違反すると100万円以下の罰金 |
注:アイルランドは2015年のマイクロチップ規則・犬管理法・犬繁殖施設法と2026年11月3日発表の戦略、日本は動物愛護法・狂犬病予防法による。
出典:動物福祉戦略2026–2030、e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(第10条・第21条・第23条・第46条)
よくある質問
Q. マイクロチップを入れたら、鑑札はいらない?
A. 住んでいる市区町村が狂犬病予防法の特例に参加していれば、マイクロチップが鑑札の代わりになります。参加していなければ、市区町村で犬の登録をして、鑑札を着けてください。狂犬病予防注射の注射済票は、どちらの場合も受け取る必要があります。
Q. 猫もマイクロチップの義務はありますか?
A. 日本では犬と同じで、販売業者は装着と登録の義務、一般の飼い主は装着が努力義務です。アイルランドの2015年のマイクロチップ規則は、犬だけを対象にしています。
さいごに
アイルランドは、すべての犬にマイクロチップを義務づけたうえで、違反を反則金で取り締まれるようにする方向です。日本は、販売業者に義務を課し、マイクロチップを鑑札の代わりにする特例で犬の登録とつなげてきました。
マイクロチップは、登録した情報が今の住所や電話番号になっていないと、迷子になったときに飼い主へ連絡が届きません。引っ越しや電話番号の変更をしたら、登録の内容を見直しておきましょう。
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出典
- アイルランド農業・食料・海洋省「Minister Heydon launches Animal Welfare Strategy 2026–2030」(2026年11月3日発表)、「Animal Welfare Strategy for Ireland 2026 - 2030」(2026-11-04確認)
- Microchipping of Dogs Regulations 2015、Animal Health and Welfare Act 2013 第36条、Control of Dogs Act 1986、S.I. No. 540/2023(2026-11-04確認)
- Dog Breeding Establishments Act 2010、Sale or Supply of Pet Animals Regulations 2019、An Post「Dog Licence」、ダブリン市(2026-11-04確認)
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」、「狂犬病予防法」(2026-11-04確認)
- 環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録について」、環境省 登録サイト(特例制度に参加する市区町村一覧)、厚生労働省「狂犬病について」(2026-11-04確認)
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